割と最近、ウルダハ近くのゴブレットビュートで……。
チビユリ日記
エピソード2
~サブリガの覚醒~
サブリガが迫害された。
一般人に支配された世界では半裸族は追いやられ、時には怒られる。
そんな情勢下でサブリガの密輸業者「RINDOU」に勤めることになったサブリガの暗黒卿チビユリはとある問題に直面する。
サブリガが履きたい。
その為には、まず経験値をあげなければならぬ。
偉大なるサブリガを履くためユリはザナラーン郊外へと向かう。
「うーん、サブリガを履くにはまだ経験値が足りませんか。世の中には履くことすら難しい服があるのですね」
自分で言っていて不思議なものですが、エオルゼアでは服を着るにもモンスターとの戦いや、ダンジョンの踏破によって経験を積まないと着ることが認められない服がたくさんあるのです。
何故ですかね。全く分かりません。
でもレベルが足りていないと服がはじけ飛ぶと言われています。
嘘です。そもそも履く事すら出来ません。不思議な服どもです。
『修行は順調ですかチビユリ』
リンクパール越しにアレの……じゃなかったマスター(店長)の声が響いてきました。
「はい!もう少しでサブリガを履けそうです。あともう少しだけ強い敵がいると良いのですが……」
そう――私はレベルをあげようと戦いには出たものの、以前の様に強敵に襲われてはひとたまりもないのでウルダハ近郊で狩りをしていたのです。
ですが町の近くにいる魔獣では大した経験にはならずに伸び悩んでいました。
『お金は貸してあげますから、他の冒険者でも雇ってぱぱっと強い敵を殺っちゃいなさい……なさい……なさい』
ブチッ
無駄にエコーを利かせたボイスが腹立つのでリンクパールを切っちゃいました。
とは言え、アレの言っていたことは確かに合理的です。
強敵と軽く戦い、経験豊富な冒険者にバビュンッと片づけてもらってしまう……
パワーレベリングと言われる戦い方ですが、存外に経験値は溜まるものです。
さてと、それでは誰を雇いましょう。
パワーレベリングにはそれなりに強い敵を倒す必要があります。
なら雇う人も強くなくては! と、町中へ強い冒険者を探しに行きます。
こんな始まりの町に強い冒険者は集まるのか。
答えはイエスです。
エオルゼアに住む冒険者たちは新しい場所へ行けるようになったとき以外は、帰巣本能がある為に中々高い確率でウルダハ、グリダニア、リムサ・ロミンサへと帰ってきます。
お陰でお金さえあれば人には困らないと言うわけでして、早速町へと繰り出しちゃおうかなと。
「いやダァ!! おら何も悪いごどしでねえ! はなせぇ!」
冒険者ギルドへ行くと何やら半裸のサブリガお兄さんが不滅隊に連行されていきました。
何をしたのでしょうね。物騒な世の中です。
私は捕まるようなことはしていませんが、襲われないように気をつけないといけませんね。
「ごめんなさいね? サブリガだけ装備した露出狂がいたみたいでドタバタしていたのよ」
「雰囲気壊れるからやめてほしいわ」と、周りにいる冒険者達が嫌そうな顔を浮かべていたりしました。
これが世の中から向けられるサブリガ使用者への眼差しなのです
理解ができません。このフィット感と解放感の相反する存在を兼ね備えていながらバランスを損なうことのない履き心地。好きな色に染められる多様性。ちょっとだけ履く人を選ぶ特別感。
最高の装備なのに!!!
「それで、何のようかしら?」
----------あ!すっかり忘れてました!
「ここでこのくらいの額で雇えそうな強い冒険者さんいますか?」
冒険者ギルドの顔役様に指で額を示しながら雇えそうな人がいないかと聞いてみると
「そのくらいかぁ……それくらいなら……あ! そうだ、あそこの人なんてどうかしら」
お姉さんが指してくださった先にいたのは、白髪の……剣士さん?
なにやらここいらではあまり見かけない装いですが、風の噂に聞く東方の剣士様でしょうか。
どのみち頼みの綱はあの人しかいません。さっそく聞いてみるとしましょう。
「こんにちは、お姉さん! かれこれこういう者なのですが……」
「え、かれこれ……?」
「あ……いえ、なんでもないです。……これ程のギルでレベリングを手伝って頂きたくて。パワーなレベリングです」
「ほう、パワーレベリングですか。その額でとなると安すぎる気がしますがいいでしょう。手隙になってしまっていたので暇ですし、お手伝いいたします」
まさかの即決です。判断が早い!持つべきは頼りになる先輩ですね。
同じ剣術士ですし戦い方も見せてもらって学んじゃうとしましょう。
「ありがとうございます!同じ剣術士の先輩さんに出会えてうれしいです!」
「剣術士ではないです」
「えっ?」
「剣術士ではありません。侍です」
サムライ……?それってなんでしょう。
不思議と蜘蛛男なヒーロー映画の監督をしていそうな気のするお名前です。
いやなんでもありません。
あ、やめて。そんなに呆れたような目を向けないでください。冗談なのです。ごめんなさい。
「私の様に東方の刀を使って戦う人を侍というのです。剣ではありますが違う流派ですね」
「な、なるほど!サムライは初耳ですが違うジョブなのですね」
「ええ、まったく違います。ところでお聞きしていませんでしたが、お名前を伺っても宜しいですか?」
「あ!はい!ダース・サブリ……じゃなくてユユリ・ユリです!ユリとおよび下さい!」
「ユリさんですね、畏まりました。私は八重と申します。よろしくお願いいたします」
「すみません、そこの方!私もともにお連れ頂けませんか?」
声の方向を見てみるとピンクなララフェルさんがいました。
「申し遅れましたニユ・ロロと申します。ロロとお呼びください!私もレベルをあげたくて、お手間でなければお連れ頂きたいのです」
どうやらパワーレベリング希望者のようです。漁夫の利的な何かを狙っているのでしょうか。
都会は怖いところです、もしかしたら何か損なことになると怖いです。
ここは断っておき……
「お金はこのロロが払いますよ」
よし一緒に行って貰いましょう。決してお金に目が眩んだとかではありません。
「お一人程度なら私も問題ありません。少々効率が落ちるかもしれませんが参りましょう」
こうして我々は旅に出ました。
数日後
こうして共に行動をしていると、互いのことを少しずつ知るようになりました。
例えばロロさんは既に一度学者というご職業をマスターした方らしく、今回は新しい職業の経験を積むために着いて来られたようです。
八重さんの言っていたサムライは字にすると侍と書くらしく、何か目的があってウルダハへと来たようです。
その目的は教えてくれませんでしたが!
そうして互いのことを知りつつ、遥か遠くの地クルザスへと来ました。
極寒の地ではありますが、まあまあ修行している我々には大して効きません。
サブリガの暗黒卿なら半裸でも例え火の中水の中だろうと突き進めるのです。
「少々席を離れますね」
クルザスのとある場所で野営をしていた時のことでした。
八重さんが何か用事があるようでキャンプを離れてから少し経った頃、ふと遠くから何かが来ているのが見えました。
「ろ、ロロさんあそこに何かいるのが見えますか?」
「え?何かいますか?」
ロロさんへ声をかけようと少し目を離した時には見えなくなっていました……
いや! いました!氷壁に紛れるようにそいつはいました。
そう、奴は
クルザスブタタンです。
クルザスにいると言われている伝説の猛獣で、かつて20頭を超えるベヒーモスを立った1匹で倒したと言われています。
「ぶっぶっぶ、クルザスブタタンだぶー、おめーら食べちゃるぶー!」
言葉を話した!?!? まさか人語を理解できるほど知能があるなんて!
どうしましょう。
ロロさんも敵に襲われているときに着替えて職を変えるなんて難しいでしょうしどうしましょう。
「ぶぶー!さっきおめーらといた女は倒しちゃったぶー」
八重さんが殺られた!? この人でなし! というか豚でなし!きっと不意打ちしたんですね!卑怯者め!
「おら、行けぶー!」
そうクルザスブタタンが叫ぶとどこからともなく小さめなブタタン達が現れました。
何ということでしょう。あの魔獣には仲間がいたのです。
体は小さめとはいえ、奴が従えているもの達となると見た目では測り切れない強さかもしれません。
そもそも小さいとは言っても私たちララフェルとはそこまで大きさが変わりませんし……
「ユリさんここは何とかして逃げましょう。私たちだけではさすがに敵いません」
確かに私たちだけでは、あの伝説の獣にはどう足掻いても敵いません。
逃げた上でなんとか奴等を撒いて、ロロさんが武器や服を変えることが出来ればまだなんとかチャンスもあるかもしれませんが、ああも仲間まで現れてしまうと逃げる事すら難しそうです。
ただ何か違和感を感じます。何かがおかしい……
「殺れぶー!」
考えを巡らせようとしたところでそれを邪魔するかのようにブタタン軍団がブーブ、ブーブーと叫びながら距離を詰めてきます。
わあ、だめだぁ……もうやられるぅ……
「ロロさん。天国で八重さんに危険なところへ連れてきてごめんねって言いましょう……」
「誰に天国で謝るって言いました?」
はやや? 何やら聞き慣れたお声が
「ぶぶっ!?」
「ぶぶぶっ!?なんだぶー!?」
「誰だぶー!?!?」
スタン。
とブタタン達の背で音が聞こえたかと思えばそこには数日間共に旅した、見慣れてきた東方衣装のあの方がいたのです。
その場にいた生物全てがその姿に怯えを抱いた。
敵味方とわずです。あの人怒るとマジで怖いんです。
見たこともない冷え切った笑みを浮かべた彼女を見た途端、同様に皆斬られたと錯覚を覚えるほどに。
「な、なぜだぶー! さっき背中をポンして高めな感じのところから落としたぶーのに!」
「どんなに高いところから落ちても冒険者は死にません」
「何を言って」
「死にません」
「いや、そんなわ」
「死にません。そういう世界の理なのです」
えっ冒険者って高いところから落ちても死なないの!?
とブタタン達が慌てています。
その通り冒険者はどんなに高いところから落ちても何故か絶対に死なないのです。
「大人しく斬られて燻製されて、ベーコンになりなさい」
八重さんは真っ直ぐに親玉の青いブタタンへと向かいました。
迷うことなく、突進する様に。
「必殺剣・九天」
八重さんの手が消えた。
そう見紛う速度で振られた刀によってクルザスブタタンに向かう八重さんへ襲い掛かろうとしたチビブタタン達が、あっけなく切り伏せられていきました。
「ぶー!」
「ぶぶー!」
「ま、待つんだぶー! おめーら見逃したるからやめんだぶー!」
全く減速することなく距離を詰められたクルザスブタタンはベーコンになった。
燻製されていないにも関わらずベーコンに。
※そんなベーコンで作ったベーコンエピを食べたい方はぜひプリズンユリブーへ!
「ご無事だったのですね!」
「ええ、落下死はシステム的にあり得ませんので。お待たせして申し訳ありませんでした」
「はい!あと私もあのチビブタタンに攻撃を少ししていたので、目標としていたところまで強くなれました!」
そうなのです! 今の戦闘中になんとか経験を積むことができていよいよ念願のサブリガを履けるようになったのです。
「あ!お二人ともロロも着替えてきましたよ! いつまた襲われてももう平気です!」
いつの間にかロロさんも着替えて来ていたようで、学者の可愛らしい装備になっていました。
似合っていていいですよね、こちらの衣装……カメラがあったら撮り続けてしまいそうです。
というか撮りましょう。パシャパシャパシャ
ふう……可愛いものを撮れたところでいよいよお待ちかねのサブリガです!
全てはこの日の為に……雨の日も風の日も乗り越え遂に、遂にこの時が来た!
早速履いちゃいましょう!
Nice fits……
何という着心地! 何という履きやすさ! 体の奥底からパワー! が湧き上がってくるようです。
ヤー!!
思わず私の中のきんにくんが叫んじゃいました。きっとガントレットを装備した時のサノスもこんな気持ちだったに違いありません
「やった! やった! 遂に履けましたよ、八重さん、ロロさん! 見てください!」
おっと、大人気なくつい叫んじゃいましたね、テヘペロです。
「よかったですね、ユリさん! おめでとうございます!」
Oh……ロロさん優しい。我が事のように喜んでくれます。
なんと人徳の高いお方なのでしょう……ん?おやや?
何故だか八重さんが真顔で睨んできます。
そう……それこそ先程クルザスブタタンを倒した時のような眼差しで……
そう思っていたら八重さんからひと言。
「悲しいですね」
「へ?」
いったい何が悲しいというのでしょう。むしろハッピーな気持ちですが。
え、あれ?なんで?
なんで八重さんは刀を抜いたのです?
「まさかサブリガの暗黒卿がユリさん……貴女だったなんて」
「八重さん何の事ですか?」
「ユリさん。貴女はサブリガ密売組織RINDOUの構成員ことダース・サブリガンですね。私はサブリガの暗黒卿打倒の為にエオルゼアへ来たのです」
~続く~
FF14ランキング
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