ボクは昔から1人で仕事をしてきた。
どんなときも1人で。
健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、貧しきときも、富めるとき……いや、富めるときはそもそもなかったかもしれない。
大袈裟に書いたけど、まあ普通に暮らしてきたってことさ。
1人でではあるけどね?
ボクは幸いとっても強かったから、1人で大抵のことはなんとかできた。
だから自由でモノゴトに縛られない冒険者っていう仕事が気に入ったし、腰に下げた刀を相棒代わりにこれまで戦い抜いてこれた。
でも、そんな日々にも転機が訪れた。
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『やだ!ボクはソロでしか仕事しないって言ってるだろ!』
『お嬢ちゃん、よくそんな状態でそんなこと言えるよな』
目の前にいる真っ黒な服を着た男が逆さまになってこちらを見ている。だいぶ呆れた顔をしているのは見て取れる。
というよりもこっちの視界が逆さなのだ。
今自分は罠にかかって木から片足を吊られて、数刻はぶら下がっている。
正直にいえばだいぶ辛い。
多分頭に血が登ってきているのだと思う。
いや、この場合はむしろ降りてきていると言うべきなのだろうか。
『もう一度言うぜ。俺もお嬢ちゃんも同じ依頼を同じ依頼主から受けたみたいだし手を組まないか?そうすればその罠解いてやるよ』
『やだ!知らない奴と組めるわけないだろ!!』
『そうか。じゃあな』
クルッとこちらに背を向け男は去って行く。
良く見れば背中には大きい鎌を背負っているようだ。
というか、この男本当に見捨てやがった!こんな可憐なボクを!
『わー!待て待て!待って!!待ってくださーいー!!!』
男はピタリと立ち止まってこちらを見た。
ムカつく奴だけど顔は渋くてかっこいい気がする。
『お願い!下に落ちてる刀とって!』
『んー、嫌だね。お嬢ちゃんのことをただ助けたって俺に益がないだろ?』
『そんなぁ〜〜拾うくらい良いじゃないかぁ』
『俺がお前を助けるのに出す条件は1つだけだ。一緒に依頼をこなせ。その方がお互いに楽だろ?』
『グヌヌヌヌヌッッ……うーん……お前裏切ったりしない?出会ったばかりのボクが信用すると思う?』
『まあ信じられねえならここで話は終わりだ。せいぜい達者でな』
『んなッ……』
そう言ってまた男は去ろうとする。
『わー!待てってば!!協力する!協力するってば!約束するから、たーすーけーてー!!!』
『まったく……最初から素直にそう言っとけよ』
ため息混じりにそう言いながら男は振り返ると背負った大鎌を振り抜いた。
『いたいッ!!』
自身の足を捕まえていた縄が切られて地面に顔から激突した。
『いたたたたッ……』
頭をさすりつつ乱れた髪を整える。
ついでに落としてしまっていた刀を腰へとさした。
なんだろうかこの男は武器を拾った途端に私が攻撃してくるとか思わないのだろうか。
『ガルルルルルルル』
とりあえず威嚇しておいた。
『何やってんだ、大丈夫かお嬢ちゃん。まあさっきはあんな風に言ったけど裏切ったりはしねえから安心しな。そんな事はしないってこの鎌に誓うぜ』
威嚇は効かなかった。
あとその男の言葉は妙に信じられた。
たぶん、男がこれに誓うと言った大鎌がとっても丁寧に手入れされていて、年季が入ってそうではありながらも汚れひとつない、見るからに大事にされてる……彼の誇りを象徴する様なものであるって分かったからだと思う。
『ふ、ふーん……ならボクも約束通り協力するって、この刀に誓ってあげるよ』
腰に刺したばかりの刀を引き抜きボクもらしくなく誓った。
『おう、よろしくなお嬢ちゃん。俺のことはアールって呼んでくれ』
そう言いながらニカッと笑った彼の顔は殆ど布に包まれてよく見えなかったけど、とっても記憶に刻まれた。
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和装のミコッテ:侍に憧れているソロの駆け出し冒険者。 |
アール:ガレマルドで伝来するリーパーの技を受け継いだ青年 |
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