『この仕事は1人でやる!』
マコトがこんな事を言ってくるのは、出会ったばかりの頃以来初めてかもしれない。
『急にどうしたんだよ、1人でやる〜なんて昔みたいな事言い出して』
マコトがこんな風になった理由はなんとなく察しがついている。
数日前に町中で発生した怪死事件の話を聞いた時からこうだ。
えらく綺麗に、それでいて異常なほど身体を斬られた死体の見つかる事件がここ6日間で既に6件も出てる。
おかげで町中の奴らが怯え上がって、店は早仕舞いするわ、仕事は減るわで正直早くなんとかしないと商売あがったりだ。
『前から言ってるだろ。危険な仕事は俺達3人でやった方が早いし安全だって』
『ソウダゾ。危ナイカラヤメトケ、マコト』
『それでもダメなものはダメ!アールもベルも関係ないから!』
『コノ事件ハ、絶対ニ危ナイ!オ前弱インダカラ勝手ナコトハスルナ』
『弱くないです〜〜!強いです〜〜!!』
口調は普段からこんなんだが、目がマジだ。アイツらしくない気迫にベルートも心配してる。
普段から喧嘩ばかりしてる奴らだけど多分ベルートからすればやんちゃな妹でも見てる気分なんだと思う。
だがマコトは一度これと決めたら兎に角譲らないし、基本的には考えを曲げない。
多分このまま話してても埒が明かないだろうしこっちはこっちでとりあえず別行動を取る方がいいかもしれない。
『わかった、勝手にしとけ。行くぞベル』
『オイ略スナッテ何度言ッタラ……オイ、マジデ行クノカ?』
『勝手にするよーだ!』
ベルートには悪いが少しの間、俺達は俺達でこの事件を調べようと思う。
出来ることならマコトより先に犯人を見つけて解決したい。
なんとなくだが、今のアイツは冷静さを欠きすぎていて、このまま行けば良からぬ結果が待ってる。
だから早く。兎に角早く。
バカな家族に何か起きてしまう前に、この問題を解決してやる。
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『なんで……なんで来たんだよ!』
数歩先すらまともに見えないような強い豪雨の中で、目の前には壁に寄りかかりながら今にも息絶えそうな相棒がいた。
『マコト……悪……いな失敗しちまった』
違う。失敗したのはアールじゃない。
これまで散々追ってきたアイツを見つけて戦ったけれど、逆に追い詰められた挙句に7人目の死体になりかけたボク。
でも、すんでのところでアール達が来てくれた。
来るなって言ったのに、酷い言い方で拒絶したのに来てくれた。
ボロボロになったボクを庇ってアールは戦ってくれた。
アールはこれまでの仕事で負けたことはおろか、傷だってほとんどおったことがないくらい強かった。
でも、炎の様な刀身の打刀を使うあの男の方がそれ以上にただただ強かった。
『愚かな奴だ。ただでさえ私より弱いというのに、こんなヤツを庇って戦うからそんな事になる』
アールは元からベルートとのコンビネーションを活かして戦っているけれど、今日はベルートにボクを守らせて1人で戦った。
ボクがこんな風になっていたせいだ。
そのせいであの大鎌はボロボロに折られ、アールはあちこち斬られて死にかけている。
赤熱化した刃で斬られた傷からは血こそ出ていないけれど、重症なことに変わりはない。
このまま行けばアールは死ぬ。
なんとか……なんとかしないといけないけど混乱して頭が回らない。
どうすれば良いのか分からない。
『相変わらず弱いなマコト……私は決めたぞ』
赤く燃える刃がアールへと向けられる。
『今回の7人目はその男にする。知っているだろう?そういうルールだ。1日に1人、それを7日間。強き血をこの刀に吸わせてやるんだ』
そしてアールに向いていた刃がこちらへも向けられる。
『とは言えこのルールは強い奴に対してだ。お前の様な出来損ない……いつまでも見ていたくない。まとめて斬ってやるから感謝して逝け』
『逃げろベルート!』
折れた鎌を構えながらアールがあの男へと斬りかかっていた。
そしてボクはベルートに抱えられ、そのままそこから引き離される。
嫌だ嫌だ嫌だ、だめだ。
『待ってアール、行かないで!!!』
でも瞬きするよりも早く雨にかき消されてアールは見えなくなっていた。
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『アールは……』
『殺サレタ。契約ガ切レタノガ分カル……ダカラアールハ、モウイナイ』
どれだけ飛んだか分からない。
アールに言われるままマコトを抱えてここまで飛んできた。
あいつの命がこの世にないとわかる。俺とあいつの結んだ契約が切れた事を通して伝わってくる。
『ベル……キミもいなくなるのかい』
見ればもう身体が薄れている。
無念だ。
そんな風に思うことが出来るようになったのはきっとアールやコイツと冒険して、色々なものを見て、たくさん話してきたからだと思う。
あぁ……マコトだけ置いて消えるのが無念でならない。
ムカつく奴だが、大切な奴だ。
アールと俺とコイツはきっと家族のような関係だ。
差し詰めコイツは不出来な妹だろうな。
『アァ、消エル。デモオ前ハ、悪クナイカラ……』
どうすればコイツを悲しませずに消えられるのだろう。
こんな奴を1人にしてなんていけない。
こんなボロボロになってる家族を置いてなんて……
『ダメだ』
だが、泣いていると思ったマコトはただひたすらに真剣な眼差しでこちらを見ていた。
『ベルート。ボクと契約して』
ああ目を見れば分かる。きっと俺が思うよりもコイツはずっと強かったんだ。
『ボクは弱い。あいつを倒したいけど1人じゃ無理だ。ボクはそれを分かってないで大切な人を亡くした。でももう失わない、絶対に』
アール、もう少しだけ俺は旅を続ける。
いつかまたどこかで会えたら語ってやろう、コイツとの冒険を。
『戦おう。ボクたち2人で!』
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『おい聞いたか?』
『ああ、ここ3日間で3人も死人が出たらしいぜ』
冒険者ギルドでそう話す男達の声が聞こえてくる。
あれから数年たった。
この感じはきっと、またあいつが動き始めたんだろう。
『行こっかベルート』
『アァ今度ハ俺達デ、アイツヲ倒ソウ』
刀の柄に手を添えながら立ち上がり町中へと繰り出す。
今度こそは、負けない。
ボクはもう、1人じゃないから。
FINAL FANTASY XIV(FF14)ランキング
マコト:因縁の敵を長年追い続けるミコッテ |
アール:マコトを自身の家族のように思い、ともに冒険をしている。 |
ベルート:マコトと新たに契約を結んだアヴァター。 |
謎の男:炎の刀を使う正体不明な男。 |
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